【施工前に知っておきたい】隅々までのコーティングとその後のリスク

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2019/5 他社施工の日産スカイライン追加
コーティングは塗れば良いと言うものではありません。
❌「隅々までコーティング」=良施工、とは限りません
コーティングは塗れば良いというものではありません。
「隅々までコーティングを塗りこみます」というフレーズ。
一見すると「手間を惜しまず、丁寧に施工してくれるお店」とお客様は感じるかもしれません。
しかし、その“隅々”とはどこを指すのでしょうか?
- 給油口の中
- ドアの内側(ヒンジやゴムモール付近)
- トランクの内側やフチ
このような場所は、水が溜まりやすく、乾きにくい構造になっており、普段の洗車でも見落とされやすい部分です。
そのため、一部の洗車マニアのような方以外には、かえってコーティングを塗らない方が望ましいエリアと言えます。
⚠ なぜ塗らない方が良いのか?
こういった場所にコーティングを塗ってしまうと、以下のようなトラブルが起こりやすくなります:
- 水分中のカルキやミネラルが残留し、白ジミやウロコ状の固着汚れが発生
- 重度化した場合は研磨しなければ除去ができず、そもそも機材が入らない
- 定期的なメンテナンスが困難なため徐々に劣化し、逆に見た目を損ねる結果になる
下の画像をご覧ください。
これはまさに、「隅々まで丁寧に施工した結果」**時間が経ってから現れる“想定外の劣化”**の例です。
レクサスRX



【施工事例】「洗車のせい」と片付けられたお悩み相談
他店で2層式コーティングを施工されたお客様が、施工から1年で発生したトラブルをきっかけに、当店へご相談にいらっしゃったケースです。
本来であれば、施工店にてアフターサポートが行われるべきところですが、相談された際に「洗車のやり方が悪い!」と一括されてしまい、十分な対応が得られなかったそうです。
丁寧に話しても取り合ってもらえなかったため、当店にセカンドオピニオンとしてご相談いただきました。
同業他社施工の日産スカイライン
施工後1年 スカイライン(2019年追記)
記事抜粋
❌ このような場所にもスケールの固着が…
下の画像をご覧ください。
給油口やトランクの内側など、普段あまり目につかない部分にまで、シリカスケール(水ジミ・白ジミ)がびっしりと固着しています。
正直なところ、この状態は“ちょっといただけません”。


☑ 原因は「洗車」ではなく「構造と設計」
お車の状態を確認したところ、トランク内側の水が溜まりやすい部分に、強固な白い汚れ(シリカスケール)がびっしりと固着していました。
これは、水道水に含まれるカルキやミネラル成分が蒸発後に残り、硬化したもので、いわゆる「シリカスケール」と呼ばれるものです。
特に問題だったのは、施工されたコーティングの構成でした。
💡 2層式の落とし穴:トップコート依存
施工されていたのは「無機ガラスコーティング+有機トップコート」の2層式。
この構造では、ベース層のガラス膜がもともと水ジミに弱い特性を持っている場合、それを有機質のトップコートがカバーする設計になっています。
しかし、トップコートはどうしても時間とともに劣化します。
劣化が進むと、下地のガラスコーティングの弱点が露呈し、
結果としてシリカスケールが固着しやすくなります。
このような場所は拭き取りが困難なため、洗車マニアのような方でない限り、再発リスクも高いのです。
❌「隅々まで施工」は逆効果になることも
このようなリスクがあるため、当店では、
「手が入らない・拭けない場所にはコーティングを施工しない」
という判断も、あえて行います。
施工=正義ではありません。
大切なのは「メンテナンス性と美観の持続」です。
ポリッシャーが入らない・拭き取りができない場所にコーティングを塗ってしまうと、トラブルが起きた際に除去すらできないのです。
今回も残念ながら、研磨不可能な部位であったため、除去は困難と判断いたしました。
✅ 改めて当店にて施工:SPGコート 低撥水タイプ
その後、お客様には当店の完全2層式ガラスコーティング「SPGコート(低撥水タイプ)」をご提案・施工させていただきました。
さらに、新しく購入されたお車も当店にご依頼くださり、信頼のお付き合いへとつながっております。
✅ 正しい施工とは
プロの施工とは「どこを塗るか」だけでなく、「どこをあえて塗らないか」の見極めでもあります。
お客様が5年、10年先も美しく保てるように考え抜いた設計施工を心がけております。
見た目の“施工感”ではなく、**未来の「維持しやすさ」「美しさの持続」**を重視した、戦略的な施工を行っています。
ナンバープレート土台へのコーティングとお手入れについて
ナンバープレートの土台を取り外し、ボディと同じコーティングを施工された場合は、洗車の際や雨に濡れたあと、海沿いを走行されたあとなどに、必ず土台を取り外してその内部も洗浄してください。
この部分には、水に含まれるミネラル分が蓄積しやすく、ミネラルスケール(白いウロコ状の固着汚れ)が発生します。
特に白いお車では、その状態が続くと黄ばみを引き起こす恐れがあり、最悪の場合、その黄ばみは除去できなくなることがあります。
また巻頭でもご案内したとおり、輸入車の多くはナンバープレートをビスで直接固定しているケースが一般的です。
一度や二度の取り外しでは問題ありませんが、繰り返し脱着することで確実にネジ山が弱くなっていきます。
「これぐらい大丈夫だろう」と思われるかもしれませんが、私たちはお客様の大切な資産に対し、そのような安易な考えは持ちません。
ネジ山が弱くなった場合、大きめのビスで締めることで応急対応は可能ですが、結果としてネジ穴が広がり、最終的にはバンパーそのものにダメージが及ぶ可能性もあります。
毎回の洗車で土台を外すという作業、現実的でしょうか? 手間に感じませんか?
だからこそ、お手入れが難しい・手の届きにくい場所にまで無理にコーティングを施すべきではないと私たちは考えています。
むしろその部分は「コーティングしない」という選択が、車を長く美しく保つうえで最良の判断となる場合もあるのです。
下記画像は他社様コーティング施工済車
ナンバーベースを外して頂いて研磨を行い、2層式ガラスコーティング(べースガラス、トップ固まらないコーティング 良くある2層式)を行ったそうです。

施工時点では非常にきれいな状態だったそうですが、後に黄ばみが発生し、除去をご依頼いただきました。
しかし残念ながら、黄ばみは除去不能となってしまいました。
この黄ばみは、2層式コーティングにおけるトップコート部分に原因があると考えられます。
トップコートは有機質を含んでいるため、ベースコーティングの弱点を補う目的で施工されますが、逆にその有機質成分が原因で黄ばみが発生する場合があります。
また、ベースコーティング自体の弱点が露呈してしまったケースもあります。
特に、頻繁にお手入れができない部分ではこのようなトラブルが起こりやすいため、
極力、こうした部分へのコーティング(特に有機質の多いトップコート)は避けるべきです。
これは先にご案内した、ドアの戸袋やトランクの水が流れる部分なども同様です。
なぜトップコーティングが必要なのか、またそのメリット・デメリットをしっかり理解したうえで、
お車の状態やお手入れのしやすさに応じた施工をご検討いただくことが重要です。
こちらも2層式で隅々まで丁寧にと言われコーティングされた車両

高年式車ですが黄ばみが多い
コーティングした場合は、黄ばみやスケール(水シミ)の固着を防ぐためには、洗車の際に毎回ナンバーベースを外して洗車して下さい。ドア戸袋に関しては必ず水分のふき取りを徹底して下さい。
当店の多層コーティングはセラミックプロ9H、完全2層式ガラスコーティング「SPGコート」はベースの弱点を補うためのトップガラスコーティングではありません。ですので完全2層式ガラスコーティングと表記しております。黄ばみはありえませんが、洗車できない部分には水シミが多少つく場合がありますので(専用クリーナーで除去可能)必ず水分のふき取りは行ってさい。
長期的視点という考え方について
長期的視点とは、単に今すぐの効果や見た目だけで判断するのではなく、お車の資産価値や状態を将来にわたって守るための視点を指します。
経験の浅い方は、どうしても「全てかゼロか」の極端な考え方になりがちです。
また、お客様の中には「料金を支払った以上、できるだけ手厚くサービスしてほしい」とお考えの方も多いでしょう。
しかし、より多くの手間や施工が必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。
むしろ過剰な施工や手入れは、長い目で見ると愛車のダメージや劣化を早めるリスクもあります。
だからこそ、お客様にも一度、考え方を見直していただくことが、真に大切な資産である愛車を長期間にわたって大切に扱うための第一歩となります。
もちろん、短期間でお乗り換えを予定されている方には、この考え方はあまり関係ないかもしれません。