コーティングのトップコート及び多層式コーティングについて

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多層コーティングの誤解と実態
「多層コーティング」と聞くと、ただ塗り重ねるだけで層ができると思われがちですが、実際はそう単純なものではありません。
一般的なガラスコーティングの成分は、物理的・化学的に安定した「層」にはならず、定着すらしない場合があります。実際に、多層構造を実現するためには、特定の素材や工程が必要であり、これは意外と知られていない事実です。
よくあるケースとして、「ベースコートにガラスコーティング、トップコートにシリコン系やポリマー系(中にはWAXという信じがたい例も)」という構成が多く見られます。さらに、G’ZOXやエシュロンなどの汎用製品にラベルを貼り替えて“オリジナル”として販売されているケースも後を絶ちません。
コーティング業界には明確な規格や基準がないため、業者による自由な解釈と表現が横行しており、消費者だけでなく、業界内でも不安を感じざるを得ません。
また、オリジナルと称してガラスコーティングの弱点を補う目的で有機系のトップコートを使用するケースもあります。これ自体は工夫として理解できますが、問題なのは「硬化型」と謳いながら、実際には硬化しない製品を使用していることです。もしこれが食料品であれば、大問題になるような事案です。
したがって、「多層」や「○層コート」といった言葉に惑わされず、どのような素材・製法が使われているのかを見極めることが重要です。実際には「層」になっておらず、ただ複数回塗られているだけというケースも少なくありません。
一般的な多層コーティングってどうなの?
最近、カーコーティングの世界では「多層コート」や「3層構造」「4層仕上げ」といった言葉をよく耳にしますよね。でも、ちょっと待ってください。ただ「層が多い=高性能」と思い込むのは危険かもしれません。
多層コートの基本構造
多くの場合、以下のような構成になっています。
【外部】
↓
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トップコート(仕上げ層)
┗ シリコン系/ポリマー系/WAXなど
┗ 撥水性・艶・メンテナンス性を補う
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ベースコート(下地)
┗ ガラスコーティング(SiO₂系)
┗ 耐久性・硬度・密着性の要
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自動車の塗装面(クリア層)
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- ベースコート(下地):ガラスコーティング
→ 高い耐久性とツヤが魅力。でも、撥水性の劣化や汚れの固着といった弱点も。 - トップコート(仕上げ):シリコン系やポリマー系が主流
→ ガラスコートの弱点をカバーし、撥水性や艶感をプラスします。
中には、なんとWAXを使っている施工も…これには少し驚きですよね。
層の数より「中身」が大事!
2層、3層、4層と聞くと「すごそう!」と思いがちですが、大切なのは何を重ねているか。高品質なガラス層+専用トップコートなら理にかなっていますが、もし上からWAXを塗っているだけなら、逆に耐久性が落ちてしまうこともあります。
「多層コート=高性能」とは限りません。
コーティング選びで大事なのは、**層の数ではなく“中身”**です。施工内容や使っている材料について、しっかり確認してから選びたいですね。

有機性の汚れから塗装を守るために無機質のガラスコーティングを施工しながら、その無機質コーティングの保護として有機質のトップコートを使用するという矛盾があります。無機と有機が混在することで、本来の耐久性や効果が十分に発揮されないケースも見受けられます。
硬化するか硬化しないか?
見分け方は容器です。硬化する物はビン及び缶に入れられ空気や湿度に触れないように対策されております。

容器の種類は非常に重要です。硬化しないコーティング剤はプラスチック容器に入っていることが多く、ケイ素などの微細なガラス成分を含んでいるため「ガラスコーティング」と称される場合もあります。しかし、これらは結晶化せず、耐久性も劣るのが実情です。
硬化しないタイプのコーティング剤をテストで使います。

イメージのため硬化しないポリマータイプのコーティング剤を、ウィンドウリペアで使用されるレジンを硬化させるための紫外線ライトを照射させてみました。紫外線がボトル内で散光され幻想的かつ美しく見えます♪

ガラス被膜(ベース層)を保護させたり水流れを調整するための物ですが何を使われているか注意が必要です。
トップコートについて
当店で使用するコーティングには種類によって様々なTOPコートがあります。
左から
PC-52A フッ素ポリマーコーティング
PCX-S7 オーバーコート(TOP)
PCX-V110 オーバーコート(TOP)
※プラスティックボトル入り=硬化しない。
目的はコーティング皮膜を守る一時的な犠牲皮膜です。
上記トップコートを必要とした場合、ベースとトップコートの2工程塗布では完全2層式ガラスコーティングとは表記しません。
その場合はお客様に何故トップコートが必要か、使った場合はどうなるかを説明させて頂いております。
多層コーティングについて
2層、3層、さらには4層といった多層コーティングは、セラミックプロ9Hが日本で施工されるようになってから増加しています。セラミックプロ9Hは重ね塗りが可能な素材ですが、一般的なガラスコーティングでは、同じ素材を何度塗っても層にはなりません。層を形成するためには、専用の素材やバインダーが必要となります。
良くある多層コーティングの場合
トップコートは単なるコーティング保護のために重ねられ、その上にさらに別のトップコートを塗ることもあります。しかし、このような単なる重ね塗りは「多層コーティング」とは言えません。
以下のようなイメージです。
【例1】
ポリマー(オーバーコート)
ポリマー(トップコート)
ガラス(ベースコート)
塗装面
【例2】
WAX
ガラス
塗装面
【例3】
有機質(トップコート)
有機質(中間層)
無機質(ベースコート)
塗装面
これらは単なる重ね塗りであり、機能的な多層の役割を果たしていない場合が多い点に注意が必要です。

コーティング被膜を保護するためのトップコートは、シミやウォータースポット、スケール汚れが多い場合に使われることが多く、ベースコートや施工方法が北海道の気候(気温や湿度)に合っていないケースも少なくありません。そのため、トップコートで弱点を補う意図があると考えられます。
しかし、もし数か月でトップコートが流れてしまったら、その後の保護機能はどうなるのでしょうか?本来のベースコートの性能に依存するため、早期に劣化や汚れの蓄積が進むリスクが高まります。
セラミックプロ9Hの4層構造(撥水タイプ)の場合は、以下のような層構造となります。
トップコート(撥水タイプ)
└ セラミックプロライト(ナノセラミックコーティング)
セラミックプロ(第3層)
セラミックプロ(第2層)
セラミックプロ(第1層)
塗装面
このように、全てが硬化し重なり合う無機質層で形成されており、強固な被膜と高い耐久性を実現しています。
SPGコート(完全2層式ガラスコーティング)の構造
トップガラスコーティング
柔軟性を持ち、機能性を決定する役割を担います。
ベースガラスコーティング
硬質で、塗装面にしっかりと密着するアンカーの役割を果たします。
塗装面
紫外線を防止?
紫外線を防止すると言われるケースもありますが、実証した結果全く変わりがない製品もあります。
気になる方は検索で気になるコーティング名称 紫外線で検索してみて下さいね。
トップコートにWAXを使用する場合の注意点
WAXは親油性があり、油汚れを引き寄せやすい性質を持っています。
ガラスコーティングは基本的に有機汚れの付着を防ぐ効果がありますが、トップコートにWAXを使うと、その特性が逆効果となり本末転倒です。
なぜWAXが使われるのか?
- そもそも北海道の気候に合わない
- 硬化に時間がかかるため、初期硬化不良のリスクが高い
- 遠赤外線ヒーターが無いため硬化が不十分で、スケール(白い水垢)の固着が目立つ
- 施工時の温度が低い
- 施工時の湿度が高い
1990年代はWAXが流行した時期で、多くの方がその光沢感や傷の隠蔽効果を知っています。しかし、WAXを塗った翌日はホコリが付きやすく、少し走行しただけでも汚れやすいのは親油性によるものです。
さらに、WAXは紫外線を吸収しやすく、塗装の劣化を促進する場合もあります。
※洗車機でのWAX洗車が多い車は、ヘッドライトに液体WAXが付着して黄変や白濁の原因になるだけでなく、塗装面もダメージを受けています。これは日光浴で肌にサンオイルを塗って焼くのと同じことです。
そこで現在は、ガラスコーティングが主流となっています。
ガラスコーティングのメリットは、耐久性が高く有機系の汚れを引き寄せにくい点です。
WAXはあくまで単体で使うものとして、手軽に光沢を出す目的に適しています。
コーティングとは根本的に異なる概念であり、WAXとコーティングを単純に組み合わせても1+1=2にはならないのです。
しっかりした理論に基づいた施工が重要です。
注意が必要なガラスコーティング施工について
若干のケイ素(シリコン)を含むコーティング剤を「ガラスコーティング」として使用するケースがよくあります。
特に、即日納車を目的とした施工や、施工場所の温度管理(16度以上)ができない環境(屋外やシャッターを開けたままの状態)で行われる場合には注意が必要です。
こうした環境では、本来のガラスコーティングの性能や硬化が十分に発揮されず、耐久性や効果が低下する恐れがあります。
「ガラスコーティング」という名称だけで判断せず、施工環境や使用されるコーティング剤の成分・品質をしっかり確認することをおすすめします。
セラミックプロのTOPコート(セラミックプロライト)の場合

瓶に入っております。

Ceramic Pro 9Hのトップコートとしても使用されていますCeramic Pro LIGHT(セラミックプロ・ライト)は、高い撥水性と高い光沢性を持つボディ用コーティングです。撥水性に優れ、ボディに汚れを寄せ付けにくくします
セラミックプロ ライトは単体でも施工できるコーティングになります。
- メーカーからの抜粋
- Ceramic Pro Light is a Nano-Ceramic Protective Paint Coating with durability of up to 24 months.
Ceramic Pro Light is a protective coating with a durability of up to 24 months that features a High Gloss finish, superior Super Hydrophobic Effect, Chemical Resistance, UV Resistance, Thermal Resistance and Anti-Grafitti.
Both the Super Hydrophobic and Anti-Grafiti effect combined mean the surface coated with Light will stay cleaner for longer as dirt and grime will not stick to the surface and the super hydrophobic effect of the coating will cause water to bead up and roll of the surface with any dirt and grime.
The unique formulation of Light enables it to be layered up to 2 times for even more gloss and protection, for best results Ceramic Pro Light can be applied over Ceramic Pro 9H to increase gloss and super hydrophobic effect.
翻訳すると
Ceramic Pro Lightは、最大24ヶ月の耐久性を備えたナノセラミック保護塗料です。
Ceramic Pro Lightは、24ヶ月までの耐久性を備えた保護コーティングで、高光沢仕上げ、優れた超疎水性効果、耐薬品性、耐UV性、耐熱性、耐グラビティ性を備えています。
スーパー疎水性とアンチグラファイト効果の両方を組み合わせることで、光でコーティングされた表面は汚れや汚れが表面に付着しないように長く清潔に保たれ、コーティングの超疎水性効果によって水が表面に浮かび上がります汚れや汚れがある。
光のユニークな定式化により、最大2倍の光沢と保護を得ることができます。
Ceramic Pro Lightは、Ceramic Pro 9Hよりも光沢と超疎水性を高めるために使用できます。
通常のガラスコーティング剤は重ねて塗る事は出来ますが層として定着はしません。
完全2層式、または完全3層式と表記しているのは、単純に2回塗ったなどではなく、どのような素材を使用したかの表現です。

当店のSPGコート・EXE evo1は完全2層式ガラスコーティングです。
完全2層式ガラスコーティングのラインナップ
まとめ
有機×無機の“足し算”で本当に良いのか?
多くの多層コーティングは、**ベースにガラスコーティング(無機質)**を施し、その上にシリコンやポリマー、WAXなどの有機質トップコートを重ねる構造になっています。
しかし、ここで考えていただきたいのは、無機と有機は本来まったく別の性質を持つ素材だということです。
つまり、安易に組み合わせても、本来の性能が十分に発揮されるとは限りません。むしろ、有機トップコートを重ねるということ自体が、「ガラスコーティング単体では不安がある」と認めているようなものとも取れます。
有機質トップコートの意外な落とし穴
有機物は、同じく有機汚れを引き寄せる性質があります。つまり、ポリマーやWAXなどの有機系トップコートを重ねることで、かえって汚れやすくなるというリスクがあるのです。
昔、WAXが主流だった頃、「せっかくWAXをかけたのに翌日には汚れていた…」という苦い経験をした方も多いのではないでしょうか?この問題を解決するために登場したのが、無機質で汚れにくいガラスコーティングだったはずです。
紫外線カット効果、本当にある?
「紫外線を防ぐトップコートです!」という宣伝もよく見かけますが、これもすべてが実証されているわけではありません。中には、実際に紫外線防止効果がほとんど確認できない製品もあります。
気になる方は、ぜひ「〇〇(製品名) 紫外線」などで検索してみてください。意外な事実が見えてくるかもしれません。
本当に守りたいなら、施工と管理がカギ
もちろん、ガラスコーティングにも弱点はあります。しかし、それを補うために「有機質のトップコートを重ねる」よりも、1層のガラスコーティングをしっかり施工する方が効果的というケースも多いのです。
たとえば、
- 温度管理の徹底
- カーボンヒーターによる焼き付け処理
これらを行うことで、ガラスコーティングの性能はグッと引き出されます。きちんと施工された1層のコーティングの方が、メンテナンスもしやすく、結果的に長持ちします。
コーティング選びは「層数」より「中身」
派手な宣伝文句や層の多さに惑わされず、何が使われているか、どう施工されているかをしっかり確認することが大切です。
施工を依頼する際には、「どんな成分か?」「なぜその組み合わせなのか?」「施工方法はどうか?」をぜひ聞いてみてください。車を大切にする皆さんには、本当に意味のあるコーティングを選んでいただきたいと思います。